第1章 そばに
なるべく気にしないようにして、
楽器ケースの元へ向かった。
が、いやでも会話は耳に入ってくる。
陽「やばっ、急がないとっ!遅れるよ」
「そっち頼むわ、山崎。」
陽「祐ちゃんもねー」
「へっ、分かってるよ」
そこで、さくらは片付けをする自分の手が止まっていたことに気付いた。
(重症だな、私ー。)
そんなことを思いつつ、テキパキと楽器を
片付ける。 金管は、木管より片付けが楽なため
すぐに片付けられるのだ。
二人の楽しそうな声を背に、さくらは準備室を
後にした。
音楽室に戻り、パートごとに決められた席に
座る。さくらの席は一番後ろの端だ。
準備室への扉が斜め後ろにある。
「後は…中田っ!山崎っ!とっとと片付けろー」
半ば笑いつつ、顧問である森先生が叫んだ。
数十秒後、陽香は音楽室の扉から 中田は準備室の
扉から来た。
「ほら、ちんたらせず急げ!」