第40章 深海の島と海の森
「ロ、ロー…、ありが--」
船から振り落とされようとしたところを助けられ、安心したのも束の間、ガパリと閉じられたアンコウの口が、凄まじい衝撃波を放った。
「きゃあッ!」
ローの腕に支えられ、なんとかバランスをとろうとしてたのに、再び足が床から離れる。
「ハァ…。」
耳元で呆れたようなため息が聞こえたと思ったら、ふわりと身体が浮く。
「え…。」
気がつけばモモの身体はしっかりとローに抱え上げられてしまっている。
「ちょ、ロー。わたし、ひとりで立てるわ。」
コハクですらひとりで船に掴まっているのに、母親の自分がこんなでは恥ずかしい。
しかし、モモの鈍臭さを知っているローは、そんな戯言など鼻で笑ってやる。
「黙ってろ、舌噛むぞ。」
「な…ッ」
離してくれそうにもないローに抗議しようとしたけど、すぐにそれどころじゃなくなった。
「みんな、このままのスピードで魚人島に突っ込むからね!」
次々と襲い来る海獣を避けながら、ベポの素晴らしい舵捌きにより、船は猛スピードで進んでいく。
「……ッ」
旋回するごとに、ひどい遠心力で身体が吹っ飛ばされそうになる。
冗談抜きで舌を噛みそうになり、モモは黙ってローにしがみつくしかない。
海底の航海って、恐ろしい…!
「魚人島の入口が見えたよ! みんな、1度船内に戻って!」
せっかく魚人島が見えたというのに、それを目にすることができず、全員急いで船内に入った。
どうして船の中に戻らないといけないんだろうと思ったけど、その理由はすぐにわかった。
「魚人島に突入するよ!」
体当たりをするように魚人島へ突っ込むと、その反動でコーティングのシャボンが持っていかれてしまい、たちまち海水が船を覆う。
もし、この船が完全防水の潜水艦でなければ、押し寄せる海流に身体ごと持っていかれていたことだろう。
モモは泳ぎが得意な方だけど、こんな海流を無事に泳ぎきれる自信はまずない。
良かった、船が潜水艦で…。
6年前、海賊船を潜水艦にしようと言った自分を心から褒めてあげたくなった。