第12章 4つ目
水島側
「あれ?もうあの子引っ込んじゃうの?七様の話だともう少し面白い反応してくれるって言ってたのにー」
目の前の女はそう言いながらも
氷月の作った結界を突き破ろうとしている
触れているだけの結界から拒絶の色がハッキリと見えている
でも、まだ指先1本すら超えていない
「この姿で白川氷月って子に会いに行けば面白い事になるって言われてね、試してみたらビックリ!良い反応してくれたよ」
ウフフと言いながら楽しそうに話す4つ目の女子生徒
水島「その姿って何なの?」
「あれ?本人から聞いていないかな?七様が言うにはトラウマの人物らしいよ」
幸「トラウマの人物?」
「本人さんから聞いていないんだねー」
裂「失せなっ!」
裂け先生の大鎌が女子生徒の腕を切り裂いた
「ギャァァァアアア!!!」
悲痛な叫び声が何故か室内で反響して行く
甲高い悲鳴で意識が飛びそうになるのを堪え
目の前の相手を睨む
正直、私は馬鹿だ
成績も悪くはない程度、言葉で勝てた事なんて一度もない
相手が精市、蓮二、雅治、氷月なら尚更だけど...
アイツらの言葉遣いは強すぎる...
だから私は言葉で墓穴を掘るよりか黙って相手を睨む事にする
それだけしか出来ない無力な私を笑ってくれ
それでも氷月を守りたいのは本物なんだ!
絶対に誰にも譲れないっ!
精市でも雅治でも、絶対にっ!!
女子生徒は残っている手で切られた部分を押さえている
先程までの白衣の姿は消え去り、しっかりとした女子生徒の服装に変わる
変装が解けたのだ
仁「相手に変装する時は、自分の気持ちを表に出しちゃいけないぜよ」
背後から聞こえる低い声
振り返ると雅治が立っていた、その後ろには視線を床に落としている氷月の姿が見えた
水島「氷月!」
私は相手の事を無視して抱き着いた
少し脱力している体は冷えており
瞳は何処か怯えているようだ
表情も何時もより強張りながらも無表情を装っている
水島「大丈夫、大丈夫だからね」
優しく声を掛けながら背中を摩る
『わかってるよ...』
掠れた声で返事を返す
それだけ目の前にいた人物が怖かったんだろう