第50章 ピックアップ御礼作品【月夜に抱かれて】/顕如
厚い雲が月の光りも星の光りさえ遮っている夜。
生まれたままの姿で抱き合う男女の姿があった。
女は泣きながら男の背中に爪をたて、離れたくないと言わんばかりに男の足に足を絡めていく。
頬を紅潮させ、軽く開いた口からは愛する男の名を吐息交じりで何度となく呼んでいた。
「顕如様……愛しています……」
女から何度も愛の言葉を囁かれ、そのたびに腰が疼きその疼きを抑えこむように彼女の奥に男根を突き刺さしてしまう。
それがかえって吐精感を早めてしまうと分かっていながらも止める事が出来ない。
「ん……あっ……顕如様……お願い………私の中に──」
涙ぐみながら顕如に訴える。が、顕如は困ったように笑い女の願いを断ろうとする。
女に生まれおちたからには愛する男の子を宿したい。顕如もまた男として本能が愛する女の子宮(なか)に子種を解き放ちたいと思う。
が、理性がそれを赦さない。
愛し合ってはいけない2人。
顕如の腕の中で愛されているのは自分の憎むべき敵である信長の愛妾である愛香。
───惹かれてはいけない、愛してはいけない。
何度も抑え続けた感情。
抑えれば抑える程、募る想い。
それは愛香とて同じ想いをし、苦しんでいたのだ。
顕如様は信長様の命を狙う敵
でも、顕如様は私の敵ではない───
運命の神の悪戯か、それとも導きなのだろうか。
何度も出逢う2人はいつしか禁断の恋に身を堕としてしまっていた。
もう引き返す事が出来ないくらいに。