第2章 殿
「誰、とは…」
鈴の音のような声が震えている
ああ、もう馬鹿!
やっぱ馬鹿だサブローは!
そんでもって私も馬鹿!
帰蝶さんを悲しませるつもりなんてなかったのに
「殿!!奥方様でしょう!帰蝶さん!お忘れですか?」
その場に食器を置いて裸足なのも気にせず庭に出る
「おー、宮ちゃん……、って奥さん?」
どうあってもあほ面
吐きそうになるため息を飲み込む
「今の衝撃で頭でもぶつけたのでしょうかね?帰蝶さん、きっとそうですよ。それですこーし、お忘れになられただけで…それか、殿のちょっとした冗談かと」
苦しすぎる言い訳
何言ってんだ私は!
「宮……そなた、何時から殿の事を…」
帰蝶さんは違うところに目を向けたらしい
「…そう言えば…前まで大将と呼んでいたではないか?」
恒興ちゃんも首を傾げる
今着眼するところそこかなぁ?
「…気持ちの変化で…ちょっと」
逸らした先にはサブロー
こちらも首を傾げていた