第1章 夏の思い出作り(赤)
「ほんまに主夫に向いてますよ」
「そうか?それより何食いたい?」
「何がえぇかな…うーん…あ、焼きそば!」
「初めて会った時、食うてたがな」
「いいじゃないですか!大好きなんですもん!焼きそばさえあれば生きて行けます!」
「亮みたいやな。焼きそばと唐揚げだけで育った奴やねん」
「何だか凄く気が合いそうです、その人と」
「…………落ちんで」
「え?………あぁっ!」
「あ、」
ポトッ、ポトッと
2つのオレンジの玉が砂の上へ
吸い込まれるように落ちた。
呆気無く終わりを迎えた
楽しいひととき。
「…………終わっちゃいましたね、」
「せやな」
すっかり暗くなった空。
波の打ち寄せる音と
どこかで鳴いてる虫の声。
なんで太陽は沈むんやろ。
明日なんか
来なければ良いのに。
そしたらずっとこのまま
渋谷さんと居れるのに…な。
「…………っ…」
火薬の匂いに包まれる中
鼻の奥がツンと痛くなる。
そして、目頭も熱くなって
ツー…と涙が流れ出した。
………良かった、暗くて。