第3章 visitor
「おい」
遅れて山姥切が反応を見せた。
「部隊を作るということは、部隊長も決めるんだろう? どうするつもりだ」
「山姥切が部隊長だ」
「……は?」
きょとんとしたのは、山姥切だけだった。他の者達は彼が主である理仁の初期刀であることは理解していたし、とても自然なことだと思っているため特に異論もない。だが当の本人は違うらしい。
「どうして俺なんだ! ふっ、何を期待しているのか知らないが……。お、俺でいいと言う……のか」
最初は勢いがあったものの、だんだん山姥切は小さくなっていく。もしかして……彼の反応に、理仁は思わずにやりとした。
「お前、照れているのか?」
「……ッ!!? て、て、てっ……照れてなんかいないっ!!」
ふんっと勢いよく立ち上がると、どすどす歩きながら逃げるように広間を立ち去っていく。あまりにわかりやすい反応に、その場にいた誰もがふふっと笑い始める。
「けっ、あいつ素直じゃないねぇ。そんなに嫌なら、このオレ様が部隊長にいくらでもなってやるのによぉ!」
「兼さんならきっと、素敵な部隊長になれると思うよ!」
「おうよ! ありがとよっ」
二人が勝手に盛り上がる中、落ち着いた様子で石切丸はお茶を飲み、乱は眠くなってきたのかうとうとしていた。そんな乱を、一期が優しく頭を撫でていた。皆自由だなぁと思いながらも、理仁の気持ちが変わることはない。
「山姥切を部隊長から変えるつもりはない。今後はわからないが、暫くはそれで行く。いいな?」
理仁がそう言えば、その場にいた誰もが黙って頷いた。
解散、と口にして理仁は一先ず逃げてしまった彼の元へと、足を進めるのだった。
◇◆◇
山姥切が逃げ込みそうなところと言えば、一番は物置部屋だろう。今回はノックすることなく、開けてみる。