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300Kmと0㎝

第5章 行く手を阻まれ揺れる想いは



藍蘭

優しく触れた唇から
熱が広がって。
身体を蝕むように
緩く絡むような風が吹き付ける。

理解した頭は、指令を出す。
しかしそれに応えない身体。

唇が離れると、もう一度抱きしめた彼は、
低く囁いた。

木兎「ごめんね、藍蘭」

彼の声は落ち着いていた。
でもどこか淋しくて。

私は知らぬ間に涙がでて。

木兎「見てたんだよ、藍蘭。」

彼は私の涙を知らない。

木兎「こんな風にしちゃいけなかったけど…
傷つけたのは俺なのにね。」

腕に、力が入った。

木兎「したかったことをしたのに、なんでこんなに空っぽなんだろ。」

なんだか、いたたまれなくて。
髪をそっと撫でた。
先程までとは全く違う彼に動揺しつつも。

木兎「ごめんね。藍蘭」



こんなことをされていても、
こんなことをしても、

なぜか彼を思い出す。

ゆっくりと私から離れる木兎さん。

木兎「泣いて…ごめん。そんなんで、すまないけど。」


彼は私の涙の理由を知らない


私も涙の理由を知らない


でも思い出すのは…。




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