第13章 風船ガム
フーフーパチン
黒い服を着た男が風船ガムを膨らましながら、黒い雲に覆われつつある歌舞伎町を歩いている。周りには見回りをしているように見えるのだが、彼は何か面白いものがないかどうか探していた。ーーつまり、サボっているのだ。
「ん?」
男は足を止めた。男の見る先には……。
「ウオォォォォォ!」
「ウワァァァァァ!」
ドガーン!
「しょ、勝者! 神楽ちゃん!」
「わー!」
何やら喧嘩大会の様なものをやっている神楽がいた。
「……何やってるんでィ。あいつ……」
(だが……)
男は口の端を上げて、ニヤリと笑った。
「面白ェことしてんじゃねェか。チャイナ」
「げっ、サド」
明らかに嫌そうな顔をして、神楽は風船ガムを膨らましながら音楽を聴いている沖田を見た。
「げっとはなんでィ。せっかく、この沖田様が相手をしてやろうと思ったのに」
「別にお前なんか相手にならなくていいアル」
沖田はSっ気全開で笑った。
「そりゃァ、俺に負けんのが怖ェだけじゃないですかィ?」
ブチッ
「誰がお前なんかに負けるか! 今すぐここに来るアル! 今日こそ決着つけてやるネ!」
「言われなくても、そのつもりでさァ」
沖田は上着を脱いで、腰にあった獲物も外した。そして、用意された竹刀に持った。そのまま、壇上に上がって神楽の前に立つ。
神楽はバカにしたように鼻で笑った。