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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第56章 透明な君


「じゃあ黄瀬君、適当に動いてね」

モデルを始めたばかりの頃は事細かにポーズ指定などがある仕事が多かったけど、最近になって自由にポージングする仕事が増えた。

自分の頭の中でシチュエーションやイメージを構想して、その世界に入る。

役者のようなものか。
……笠松センパイに役者はムリって言われたっスけど……。

キングサイズのベッドの上での撮影。
いつものサイズに少し落ち着く。
隣にみわがいないのが不満だ。

恋する香水。

匂いというのは、感情や記憶を呼び起こさせるものだと聞く。
プルースト効果、だったっけ。

みわの匂いの香水があればいいのに。
なんて事考えたり。

こうしてオレは、四六時中彼女の事を考えてしまう。

熱いライトに焚かれるフラッシュ。
オレは、目の前にいないみわを誘惑するようにポーズを取る。



オレの匂いが気になるように。


オレの体温を感じたくなるように。


オレに触れたくなるように。


オレに触れられたくなるように。


オレにキスしたくなるように。


オレに抱かれたくなるように。




目の前のカメラをみわに見立てて、誘惑した。

オレにはみわしか見えておらず、これ以上にないくらい集中していた。

「……こりゃ驚きだ。黄瀬君、いいね」

「モデルメインでやって欲しいくらいだ」

そんな会話がされていたと知るのは、まだ先の話である。

ちらりと腹部を見ると、みわがつけた跡が目に入る。
みわと一緒に撮られているようで堪らない。

心臓に付けられた印。
みわにオレの心を全て捧げる。

「はい! 最高! オッケー!!」

一発OKだった。


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