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【黒バス:R18】解れゆくこころ

第70章 笑顔


「みわ……」

力なく腰に回される腕。

ひやりとした芝の感触を半身に感じながら、私と涼太は暫く身を寄せ合い、抱き合っていた。

何を言ってあげられるだろう。
悩んでいる涼太に、なんて声をかけてあげたらいいんだろう。

そんな事ばかり考えてしまっていたら……


「……みわ、気遣わせて、ごめん」

まるでこころの中を読まれてしまったような、その言葉にうまく返事が出来ない。

「あ、あ、あの……」

「なんか……言ってくれようとしてる? いいんスよ、このままそばに居てくれれば、それで」

かえって涼太に気を遣わせてしまって、どうするんだろう。

「ご、ごめんなさい、私もっと……」

何も、役に立てない……。
もっと、何か……
言ってあげたいのに。

頑張って?
勝てるよ?
大丈夫だよ?

だめだ、何を言っても薄っぺらくなってしまう。

そういうんじゃなくて……
もっと、もっと。



「ね、みわ、ホントに。支えてくれる人の存在って、何も言わなくても、今ここにこうして居てくれるだけでさ、力になるんスよ……」


緩く腰を纏っていた逞しい腕がスルリと動き、優しく後頭部に触れる。

顔と顔の距離がどんどん近くなっていく。

吐息が前髪を擽りそうな近さに、思わず呼吸を止めてしまった。

「みわ、なんで息止めてんの?」

クスクスと肩を揺らして笑うその表情は、いつもよりも力が無くて。

更に影が近づき、反射的に目を瞑った。

「……可愛い、みわ」

少し乾いた唇が、ふわりと重なる。

それは次第に、頬に当たる冷たい風も気にならないくらい、熱く深いものになっていった。


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