• テキストサイズ

ワールドトリガー 瞳に光を

第7章 異例の弾丸


迅の策略は呆気なく見抜かれ、遂に風刃が姿を見せた。

揺らめく帯は空気に溶け込みながら。オーロラのように幻想的でもある見かけに反し、その威力は絶大だ。

遠隔斬撃。目の届く範囲内であれば何処にでも一線を引く。単純に見えて使いこなせば非常に強力な黒トリガーだ。

「さてと。太刀川さん達にはきっちり負けて帰ってもらうよ。絵梨さんもいる事だし、そっちの勝機はもう殆ど残ってないんじゃない?」

視線で挑発する迅に、太刀川は攻撃する形で答える。

「誰が負けて帰るか。」

ジリジリと間合いを詰めて戦う2人。
勿論それが太刀川の狙いだった。

「風刃の特徴は遠隔斬撃ただ一つ。距離を詰めればただのブレードと同じだ。」

そしてただの剣比べになった時、太刀川が勝る。
彼の1位の肩書きは伊達ではない。

剣の重さと攻撃の強さはイコールで結びついたりはしない。
武器そのものの強さより大切なのは使い手の技量。得物をより使いこなしている方が勝つ。

太刀川はまさにそれを体現していた。

彼の手で操られる刃は休む暇もなく回っていた。
確実に迅を圧倒している。黒トリガーを持つ迅を。

第三者の介入すら許さないとばかりに光を振るう。
闘争心を奮い立たせながら、少しだけ楽しそうに。

風の音すら塞がれ、いつもより1秒が長く、そして重く感じる。そんな刃が光り、踊っていた。

◆◇◆

「にしても、厄介ね。」

一方絵梨は、また1人場所を変えながら先程の言葉について考えていた。

______「手段はともあれ、あそこで狙撃しなかったという事は、撃てない理由でもあるんだろう。絶好の機会を逃してまで援護に徹底するだけなら放っておけ。」

激しく交錯するトリガーの瞬きを見据えながら、悠然と見つめる戦況。
その一つ前の流れに対する疑問。
絵梨からすれば、放置されるとは考えておらず、少なからずも動揺してしまっていた。

「確かに私はもう "あの場面" では撃つ気はなかった。けど…」

再び起動したバッグワームが絵梨の動きそのものを隠すようにはためき、風はこの戦いの終盤に向けての強さを緩める事はなかった。

きっとそれは武者震いに近い何か。
落ち着かない掌で狙撃銃を温めながら、何度目かの微笑を垣間見せる。
/ 74ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp