第2章 オレの日常
今日の様に麗らかな春の陽射しにオレは現在と同じく屋上でラノベを読んでいた。
遠くへ視線を移せば広がるのは桜色に染まる山々。
何を思うでもなく、オレはまた本に視線を落とした。
読み進めているとふと感じた人の気配。
そしてオレの視線を遮るかのように影を落とした。
「黛千尋サン。」
聞き慣れない声とオレの名前を呼ぶソイツに思わず顔を上げた。
逆光でよく見えなかった表情が、突然オレの目線と同じ高さに降りてきた。
「黛千尋サン。私と付き合ってもらえませんか?」
余りに唐突すぎてオレはマヌケな返事をした。
「は?」
「本に視線を落としてる時の表情が凄く素敵で。
一目惚れ…って言うのか分かりませんけど。
ダメ…ですか?」
この時の「ダメですか?」が余りにも可愛かったのでオレは“OK”をした。
するとは「よろしくお願いします。」と丁寧に頭を下げて、
嬉しそうに微笑んだ。
乙女チックな志向は持ち合わせてないが、
この時のの笑った顔は眩しいくらいに輝いていた。
「次の授業の準備があるから。」と白い紙切れだけをオレに渡すと、
小走りに走っていく後ろ姿。
その時ふわりと風に乗った桜の花びらが開きっぱなしの本に舞い降りた。