第7章 ひなた
道「俺は陽南のことを大切に思ってるから。
こんなに大事に思える女ははじめてかもな。
牧野の時とはまた違う感情なんだ。」
陽「司…?」
道「確かに牧野でそれまでの俺は変わった。
キレてばかりの生活が変わった。
牧野と関わることで人を屈服させる以外に楽しいと思えることができた。
牧野を自分のものにしたくてしょうがなかった。
牧野を自分の世界に引き込みたかった。
自分が楽しい、好きだと思うことを一緒に楽しんで、好きになってほしかった。
ガキだったんだな。結局ダメだったけどな。」
陽「つくしもそんな真っ直ぐな司に惹かれることもあったと思うよ。」
道「陽南、お前は違う。
俺の世界にもいて欲しいとも思うけど、それだけじゃない。
陽南と会うようになってなんか明るく暖ったかい日なたにいる心地よさを感じ始めたというか。」
陽「日なた?」
道「上手く言えねえけどな。
俺んちって両親に会えるのは年一回、姉貴とも年齢が進むとあまりかまってもらえなかったしな。
ある意味暗闇にいたんだと思うんだ。
牧野とはその同じ世界にいたい仲間を得た感じ。
陽南はその世界から明るい日なたの世界に一段上がれた感じ。
お前の名前だよな。太陽の陽。陽なただ。
感謝してる。」
陽「何言ってんの。私はそんな大層な女じゃないって。」
道「牧野とは会えばついつい言い合いしてた。
言い合うことで心をさらけ出してたけど、疲れるよな。
でもあの頃はそれが楽しかった。
刺激的でワクワクしてた。
今は違う。
陽南となら落ち着いて話せる。
陽南の気持ちを考えながら話をするようにしてる。
総二郎達にも言われるんだ。
目が落ち着いてきたって。」
陽「目が…?ああでもそうかも。最初に比べたら。」
道「昔の俺の目は冷たくて実際何考えてるかわからないって言われてた。
良くキレて周りを傷つけてたしな。
そういう目の俺を見ることがなくなったって。
前の俺はいつも人を緊張させてたんだな。
それは島でのあの時の陽南の行動のおかげだと思ってる。
お前がきっかけを作ってくれた。
普通に人と向き合えるようになった。
自分の感情をコントロールできるようになってきたというか。
しなくちゃいけないって自覚してきたっていうか。
これっていつか親父の事業を継いだ時にも必要なことだよな。」
陽「司…。」
