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シンデレラと白雪姫

第5章 Exception


拘留されてから数日が経ったが、太陽光の入らない閉ざされた部屋でシンデレラは時間感覚を失い、ハンストのために、元から細かったが、衰弱してさらに細くなったかのように思われた。
「嘘やったんか…嫁宣言は。この国の頂点に立とうとするものが歪んだ感情に突き動かされて一般people巻き込むだなんて…」
口から出たかのように思われたこの言葉も実際はシンデレラの頭の中で反響しているだけだった。
うちはこんな所で死ぬんか…まだ18で…恋も知らない。人を愛することを知らない。社会貢献もできてない。
外界の人に教えてあげたい。
王子様だなんて…この世界のシンデレラには現れないということを。


あー!ったくワザと捕まってみたが失敗だったかもな…頭をガシガシと掻きながら警官は衛兵の立つドアを見つめた。相変わらず背を向けて廊下に目を凝らしている。
格子から射す光に影ができた。
見上げてみると見知った仲間が三本指をおろしている。
3…2…1…
格子を壊し、小柄な警官が中に入ってきた。
衛兵をものの数秒で沈め、捕まった警官に向き直る。
「女の私にでも沈められたんだけどあんた、何で今の今まで大人しく捕まってたわけ?」
綺麗に弧を描く唇の赤から目をそらす。
「…下手に騒げば人を殺させかねない坊ちゃんを油断させるため…か。」
それとも、と追い討ちがかかる。
「守りたい人でも?」
うるせえ、と言い捨てそうになって咄嗟に飲み込んだ。貴重な協力者を怒らせるのはもう少し後でも遅くはない。
来てくれ、と言うと拳を突き出された。自分の拳を一回りは小さいそれに合わせた。


「何だとっっっ!!!警官が脱走した?だから言ったであろうっ片時も目を離すなと!!」
玉座で口角泡を飛ばして激昂しているのは言わずと知れたフィリップ王子で傍には白雪姫がいた。
味方を救うためには敵方に踏み込め、という小人たちのアドバイスが思わぬところで役に立ったのである。
重鎮たちは欠伸をしたり居眠りをしたりでまともに王子の話に応じるつもりはない様子であった。
「恐れながら…先ほどシンデレラ殿が部屋から脱出成功…脱走したそうです!!」
突然部屋に飛び込んできた衛兵の一人が謁見の間に爆弾を投げ込んだ。脱出成功…それを聞いて白雪姫は椅子から立ち上がり、制止するどころか応援する声を背中に受けて駆け出した。待ってて…
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