第26章 【何かおかしい】
反応があるまで数秒かかった。数秒後、美沙の目がカッと見開かれ当人はガバッと一気に覚醒、
「あかんあかんあかんっ、それはあかんっ。絶対にあかんっ。」
静かな体育館にとても普段人見知りとは思えないよく通る関西弁が響いた。
「起きたな。」
「兄さん、そらないでっ。」
「とっとと起きないお前が悪い。」
「だからってあれはないやろっ、何かおかしいてっ。」
「うるさいよ。ほら、鞄はおろしてやるからまず本体から先に降りて。」
「私はデスクトップのパソかっ。」
「使えるデータが入ってる脳なのは間違いないと思うけど、ボケなのか突っ込みなのかはっきりしな。だから月島に半々のボケとか及川さんに天然ボケとか言われるんだよ。」
下で律儀に縁下兄妹が降りてくるのを待っている排球部の連中はそんな2人の様子を見て口々に言う。
「おい、縁下の奴なんつったんだ。」
「美沙があんだけうるせーから飯抜きとか言われたんじゃねーかっ。」
「縁下さんがそんなこと言いますかねぇ。」
「ハッ、おやつ抜きとか。」
「日向、それ多分西谷さんと発想変わんないよ。」
「じゃー山口は何だと思う。」
「うーん、スマホ弄り禁止とか。」
「アハハ、ありそうだね。」
一方、2年生の一部は
「成田、どう思う。」
「美沙さんがあかんって連発してたから何か恥ずかしいことでも言ったんじゃないか。」
結構いい線行っていた。
そうして美沙は義兄の力に連れられ排球部のメンツと一緒に帰路についたわけだが
「美沙、縁下さん起こす時なんてったんだ。」
「秘密。」
「えーケチー。」
「なんぼ日向でもこれだけは嫌。」
「何で。」
美沙は顔を赤くしてそっぽを向く。
「美沙ー。」
日向が食い下がるが美沙は言った。
「絶対嫌っ。」
「だから何で。」
「恥ずかしいからっ。」
月島がここでせせら笑う。
「何それ、コクられた訳。」
「アホかっ、兄妹やっちゅーねんっ。」
月島はふーんと言ってちらと2年生達と一緒にいる美沙の義兄、力に目をやり次に美沙の手首に目をやる。
「兄妹ねぇ、ま、あんたはそう思っといたら。」
「何なんよ。」
横で聞いている山口が苦笑する。