第21章 【加速する過保護】
「しっかしまー妹も器用だよな、あんなとこで宿題とかよく出来るわー。おい縁下、おま一体何を教えたんだ。」
今度は田中が手を動かしながら言う。
「お前より集中力があるってだけだよ。うちの子だからな。」
「うおおいっ。」
やり取りを見ていた菅原が面白がってはははっと笑った。
「うちの子ねえ、本当すっかり兄貴だなっ。」
「菅原さん、今更何を。」
菅原はまーまーと言って流す。
「ところでそのうちの子だけどスマホケースの紐もつれたみたいだぞ。」
言われて力は一旦ノートと教科書を足元に置いて1人肩から下げたガジェットケースの紐と格闘している義妹を見た。
「しょうがない奴だな。」
力は呟いた。
「あれだけは家でも絶対下げてるんだから。」
「頑張れよ、兄貴。」
「はい。」
しょうないことを言い合っているうちに準備も終わり練習が始まった。練習中は特に問題なく、始まってしまえば部員達はそっちに集中するし美沙は変わらず宿題をしたりしていたから邪魔にはもちろんならなかった。元々地味な美沙が静かにしていたからコーチの烏養も二階の通路に座って宿題やってる奴がいる事など気がついていない。
(珍しく顧問の武田は烏養に美沙の事を伝え忘れていた。)