第39章 【伝説の始まり】
野郎共はこんな感じだったがマネージャー陣は外からその様子を眺めていた。
「あわわわ、縁下さんがめちゃくちゃ弄られてるっ。清水先輩、止めなくていーんでしょうかっ。」
「いいと思う、みんな楽しんでるし。ところで」
「はい。」
「縁下の突っ込み方が美沙ちゃんに似てきた気がしない。」
「あー、確かに全部拾って答えてるとこが。」
「やっぱり一緒に住んでると似てくるのかな。」
「そうかもしれませんねぇ。」
力はその間も仲間に弄られ続け突っ込みに大忙しで、図書室に留め置かれていた美沙がやってくるまでに妙な疲れを抱えることになった。
「兄さん、どないしたん。」
排球部の仲間と帰路につく時、美沙が尋ねてきた。
「ん、いや何でもないよ。」
まさか美沙を嫁にするのしないので弄られまくったなどとは言えない。不思議そうに首を傾げる美沙に力は菅原に声をかけられるまでに回想していた続きを思い出す。
「お兄さんは、お優しいんですね。」
美沙が初めて笑ったこの時、力は正直ドキリとした。元より両親からも話をされた上で妹が出来る事を承諾した訳だがまだ少し不安があった。
だが今この時、この子となら一緒にいたいと思った。
美沙に入れ込むきっかけになったのはもうちょっと後の話だったが、思えばこの時からもう片鱗があったのかもしれない。
「お前が妹になって良かった。」
「どないしたん、急に。」
「別に。」
「おーい、イチャつくのは家でやれー。」
「ちょっ、木下先輩っ。」
力が突っ込む前に美沙が声を上げ、木下とわあわあ言い合う。
力はそれをぼんやり聞きながら明日は雨が上がるといいなと思っていた。
次章に続く