第30章 【及川の助言】
ここで及川が半ギレで言ったので美沙はさすがにビビって身を引き、視線で岩泉に助けを求めた。
「それ以上自分をけなす発言はやめとけ。つかな、そのお前に現にご執心の物好き馬鹿がここにいるから。」
岩泉は呟く。
「ごめんなさいっ、ありがとうございますっ。」
「そうそう、って岩ちゃんっ、どさくさに紛れて罵倒しないでっ。」
「うるせーっ、事実だろがっ。」
しかしまぁと岩泉はここで美沙に言った。
「お前の話とクソ川からの話聞いてる感じじゃ烏野6番、お前の兄貴一線越えかかってんな。」
美沙はぎょっとして思わず岩泉ともう一度目を合わせる。
「ちょお待ってください、確かに私は兄さんに甘えまくりで兄さんもちと過保護やけど」
動揺して美沙は一瞬むせる。
「私らは兄妹ですよ。」
「おめえは気づいてねえのか。悪いけどよ、落とされたの案外兄貴の過保護が原因かもしんねーぞ。」
「お、岩ちゃんにしてはするどーい。そうだよね、おにーちゃんてば手錠増やしてるしねー。」
及川がへらっと言う。
「君も多分感覚的にはわかってるんでしょ、一線越えかかってんのは。」
ねー、美沙ちゃんと言われても答えられない美沙に及川は何を思ったのか美沙の手首、正確にはブレスレットがついているよりもう少し上を掴む。
「あれ、美沙ちゃんに触らんといてって言われない。」
「流石にさっきみたいに抱きつかれるのはお断りやけど、こういう人なんやなって認識した。」
「え、何それ。」
及川は何を期待しているのか目が輝いている。これはきっと裏表のないやつだと美沙は何となく思った。
「ええとつまり私ちょいちょい烏野4番の人に腕がヒョロヒョロやと言われては掴んで遊ばれてるんですけど、勿論兄さんは怒るんですけど、それと変わらんという認識です。」
よくわかんないやと言う及川に美沙は本人的には努力してわかりやすくしようとした。
「お友達のおふざけやったら気にならへんっていう。」
「きたっ。」
及川がここで喜んだので美沙はビビった。