第12章 カテイ
「マスター、コーヒーくれ。」
夜番の交代時間の頃、俺はダイニングへとやって来た。
とりあえず、ホッと息をついて適当に座ると、まるで待ち構えていたように俺の前にコーヒーが出される。
「はいよ。」
流れる動作で身を翻したマスターは、明日の仕込みかまたキッチンへと戻って行く。
それを横目で見ながらゆっくりとコーヒーを口に含む。
程よい香りと苦さに一息ついた時、マスターの視線を感じてそちらを向いた。
「船長から聞いたよ、例の子の世話係をしてるらしいな、ペンギン。」
手はせわしなく動かしながらも、視線をこちらに定めてそう言われる。
相変わらずの手際に密かに感心しながら俺は静かに肯定を示す。
「ああ。この世界のこのについて教え込んでる。」
そう言えば、マスターは少し眉を顰める。
手の動きはそのままに。
「どういうことだ?」
怪訝そうな顔にまぁその反応が当たり前だろうと思いながら
「さぁ?病気か、記憶喪失か…。キャプテンが教えないんだ。俺たちが突っ込むところではないな。」
いって、肩を竦めた。
そうすれば、納得できないにしてもマスターはそれ以上は聞かないとわかっている。
「ふーん。進み具合はどうなんだ?」
「なかな素直な感性の持ち主だ。教えたらすぐに吸収する。」
案の定次の話題を提示され俺はニヤリと笑った。
「教え子にしては最高だな。」
「全くだ。見た目はどこにでもいそうなガキなのに…そこしれなさを感じる。」
「ははっお前がそれをいうなら違いねぇ。」
笑いながら言われ、今日の進度を思い浮かべる。
「あしたになれば子供の絵本くらいは読めるようになるだろ。」
俺はそう、事実を言った。
すると、マスターは少しだけ目を開く。
その優秀さに驚いているのだろう。
正直、俺も驚いている。
ここ数日教えているが、最初などまるで少しだけ俺たちの文字を読めるような具合だった。
面白い具合に吸収して行くのが楽しくて、俺もあまり深く考えずにいたが…。
「あれがもし敵なら、恐ろしいもんだがな。」
そうこぼして一気にコーヒーを煽る。
「ん?なんかいったか?」
どうやら少し聞こえたらしいマスターに問い返されたが、俺は考えたくもなくてだまって首を振った。