第10章 イワカン
「マスター!!完食だよー!!」
この船のムードメーカーのようなベポの声がそう響けば、俺と今しがた話していたコックが手を勢いよく打った。
「おお!!良いねぇ!!」
「ベポが食べちまったんじゃねぇのか!!?」
「失礼だなー!!僕はさっき食べたもの!!」
「そーだったけか?」
「そーだよ!!」
食堂にいたクルー達に野次を飛ばされ、それに律儀に答えながらベポは持っていたからのトレーをカウンターに返した。
どこか上機嫌なのは恐らくベポの年齢と、あのガキの年齢がおよそ同じくらいだからだろう。
いつも明るいがそれ以上に機嫌の良いベポにクルーも機嫌の良い。
「…ベポ、今どうしてる?」
カウンターにかけていた俺を見つけるや否やよって来たベポに問えば、思い出すようにその視線を右斜め上に向けた。
「食べ終わって、何か本を見てたよ!!」
「悪魔の実図鑑か。」
あのガキは所有物などないし、あの部屋においてあるのはそれだけだ。
勉強熱心なことだとコーヒーを飲もうとすると、ベポが少し眉根を寄せる。
「んーでもすごい難しい顔してたかな…?」
「難しい顔?」
あれには専門的な用語など使われていないがな…。
まぁガキだから本など読みたくないと言うのもあるのだろうが…。
「うん、本を取る前から嫌そうな顔してた!!」
どうやら少し違うらしい。
「…成る程な。ベポ、ご苦労だった。あいつの事は今日はもう良い」
「アイアイ!!」
思い返してみれば、あの図鑑を見せた時も戸惑った顔をしていた事を思い出す。
あの時は目が悪いのかと掻い摘んで読んでやったが…要するに、文字が読めないのか。