第1章 だいあろーぐ
サワリ…サワリ…
揺れる柳が優しい。
風が優しいから。
そんな情景に目を細める私に目の前の切れ長の目が哀しく歪む。
「すまない…本当にすまない…。」
彼女は全身で詫びていた。
手は震えているし、顔色なんか真っ青。
私より年上のはずの…姉のような存在だった人のそんな表情をさらされて、なんだかおかしく思えてしまいふっと笑みを漏らしてしまう。
そんな私に哀しく歪む瞳がまたもや向けられる。
あぁ、そんな顔が見たいわけではないの。
「顔をお挙げください、ヨミ様。」
先ほど自然と浮かんだ笑みを携えたまま言えば、目の前の彼女は目を逸らす。
「私は…お前になにもしてやれなんだ。」
その声に力はない。
どうしてこうなったのかと途方もない質問を自分にしかけて…やめた。
代わりにまた微笑みを浮かべる。
「ヨミ様、私は死んだりしませぬ。
消してヨミ様をこの世に一人になどしませぬ。」
ねぇ、ヨミ様とまるでいつもとは逆の立場になったかのように私は彼女に囁いた。
俯き加減だった彼女の顔が上がれば、まるで決意を固めたかのように先ほどの哀しげな顔は見られない。
あぁこれがヨミ様だと思いながらどこか傍観的に眺めている私。
目の前の表情は、いつその作業を完了したのか、もうなにも映らなくなっていて。
「…では、後は頼んだぞ。」
響くのは先ほどの彼女から本当に放たれたのかと疑いたくなるような色のない、冷たい声。
「はい。」
それに私はただ頷くだけ…。