第32章 マナザシ
「やだ、ちょっと、予想外っていうか、待って!!」
息も絶え絶えにそういった店員さんは、私の後ろを涙目で見据えた。
「何なのこの子!!」
誰に話しかけているのだと思えば、私の背に影が差す。
「今までの奴と違うってわかったか。」
そこには船長さんがいて、不機嫌そうに言い放った。
それに店員さんは手を振って答える。
「あぁもうわかった、わかったわよ。全然違うもの。」
「あの…。」
「もういいだろ、試着も面倒だ、飯に行くぞ。」
そう言って刀で私の頭を一度叩くと、船長さんは何時はいってきたのかわからないが、この部屋を出て行く。
話に全くついていけなかった。
戸惑いつつも船長さんに続けば、店員さんはもう笑収めていたようだった。
「嫌でもわかったわよ。だってその子、ガチガチに緊張しているくせに、怯えてなんていないんだもの。」
すねるように言われて、私は唖然とする。
さっきまでのアレは何だったのかと、そう言いたくなるような程だ。
「あ、キャプテン終わったの?」
「ん、飯だ。」
「アイアーイ!!」
店の玄関に向かいながらベポくんがくるりと振り返る。
私ではなく、店員さんを、だ。
「後でトウカのものは取りにくるね!!またね、ダン!!」
その呼ばれた名前に違和感を覚え、振り返ろうとした私を強い力が押しとどめた。
「えぇ、また後で。」
耳元で聞こえる声に、店員さんだというのがわかる。
しかし、その一瞬後
「お前もな。」
全身を痺れが駆け抜けるようなテノールが囁かれたなんて、私しか知らない。