第7章 初太刀・初脇差
岩動本丸内ーー、ウチはぐったりしていた。これは…無理をした罰なのでしょうか…?
「そろそろ…帰ってくる頃でしょうか?」
未だに土方さんの事を話している和泉守さんを余所に、前田君がウチに耳打ちしてくる。
「かな…?」
前田君もぐったりした感じで、苦笑している。もう、無理なんてしません!多分…。こんな事になるんならね。
「ーーって言う事で、歳さんの偉大さが分かったか!」
「ああ…うん、はい。」
適当に流して、布団から出る。全然、安静に出来ていた感じがしない。
視界がくらっとして、眩暈が起こる。ヤバい、倒れるかも…。体が前のめりになる感じがして、倒れるかと思ったのに、別の感触がウチを包んだ。
「大丈夫か?あんた意外と小さいんだな~。」
和泉守さんに受け止められたようだ。彼の赤い着物がドアップで目に入る。しかも何か良い匂いがする。
だんだん自分が凄く恥ずかしい体勢でいる事に自覚して、顔が赤くなっていくのが分かる。
「何か顔赤くねーか?熱まで出ちまったんじゃねーか?」
「大丈夫です!有難うございます!!」
慌てて和泉守さんから離れ、下を向く。声も上ずり気味になっていて、凄く恥ずかしい。
「主君、行きましょう!加州さん達が戻って来ました。」
ウチの手を握って、先導してくれる前田君。正直、真面に歩けるか心配だった分、安心してます。
後ろから和泉守さんも付いて来ているのか、気配がした。
薄暗くなっている廊下を進んで行けば、玄関が見え、そこには出陣していたメンバーの顔があった。
「お帰りーー、」
「ねえ、お願い!この二振りを手当てして!!」
お帰りと言い終わる前に、乱が焦った感じで頼み込んでくる。誰かとんでもない怪我でもしたの?
乱と五虎退が退くと、二振りの後ろから乱とは違ったピンク色の髪の少年を背負った黒髪の少年がいた。どちらも酷い傷で、鉄の匂いがする。
強いて言えば、ピンク色の髪の少年の方が酷い傷であった。
「どうしたの…?」
「出陣先で、敵と戦っているのを助けたの。何処の本丸にも属してない刀剣でーー、」
「”薬研”に…”秋田”…。」
隣にいた前田君はこれでもかという位、目を見開いて見知らぬ二振りを見ていた。
「久しぶりだな!兄弟。ちっとばかし、ドジった。」
少年は安心させるかのように、笑顔を見せた。