第5章 今剣 そして、二度目の出陣
潜めながら眺める土方歳三の周りには、軽装だが戦時に着る服装の男達がいる。
怪我を負い片足を引きずる者、横腹が赤く染まり、押さえている者。手には鉄砲を持つ者、正しく戦をしていた。
「…あの戦はまだ続いていたんだ…。」
(貴方が皆と一緒に戦いたいと最後まで願っていたあの戦は、死んだ後も続いてた。…土方さん、戦ってたよ…。)
唇をこれでもかという程、噛み締める。顔は自然と下を向く。不意に裾が引っ張られる感覚がする。
「今剣…?」
「加州、これはいくさをしているんですか?みなれないどうぐを、あのひとたちはもっていますね。」
「ああ、している。凄く長い間ね…。」
今剣の目は、自分が居た時代には無い物を遠くからだが、目にして興奮している。
ここへ来る前も、千隼が寝ている間、目をキラキラさせながら本丸内を見ていた。
「ぼくもつかってみたいです!あのかたにかつがれているもの。」
指で指された者は鉄砲だった。結局、旧政府軍も鉄砲を入れたのだろう。
「…いつかね。」
加州は一瞬だけ今剣に笑みを見せる。
束の間、加州は今剣の後ろを見て、目を見開き、今剣を自身に引き寄せる。さっきまで彼が居た所にはーー、
「歴史修正主義者…。」
口に短刀を銜えた蛇のような異形の姿。短刀が地面に突き刺さっている。舌打ちをしながら、今剣を掴んでいた手を自身の本体にまわす。
「何だ!?」
「何の音だ?」
「あっちからだ!」
今剣が襲撃された時、物凄い大きな音がしたのだろう。顔が確認できる程度には離れていたが、そこまで音が届いたらしい。
「今剣…、走るぞ!」
ここで戦うのは不味い。過去の人達も巻き込むし、なにより、この時代の人に見つかる。
相手はお構いなしに、襲いかかって来る。敵に背を向けるのは恥だが、そんな事は言ってられない。
上から降って来る刃を刃で受け止め、力を込めて投げ飛ばす。今剣も本体を抜き、応戦をする。
隙を見て距離をとる為走り出すが、今剣は付いて来ていない。まさかと思い、振り向けばーー、
「今剣!!」
加州も言えないが、不安定な丈が大きい赤い下駄を履いているのに、浮いている敵短刀の上に飛び上がって奇襲を駆けていた。
(何で勝手に…!)
刃は、相手を捉えて叩きつける。結構効くはずなのに敵はぴんぴんとしていて、体勢を立て直す。
