第44章 Aiming for an “APPLE”
銃口と対峙した菊には、ある疑念があった。
あのときのアルフレッドは、何らかの異変――意識障害に襲われていたのではないか?
「本当に……謝ってすむことじゃないけど……」
ぽつりと、アルフレッドがうつむいたまま、重たい口を開く。
「ごめん……」
「もう、あんなことしないでくださいね」
「……ごめん……」
本当に、どうしたものか。
なんだかんだ、アルフレッドは異変解決のため、世界を多少(多少か?)強引にでも、まとめる役割を果たしていた。
そんな彼がこんな状態では、全体の士気に関わる。
それに、協力体制も脆くなってしまうだろう。
「臨時ニュースをお伝えします。ジェームズ・A・フィッツパトリック原子力発電所にて、レベル2のアラートが宣言されました。今後、レベル3の“サイト緊急事態”への更新が懸念されていることから、州は緊急時計画区域の住民に対して避難指示を――」
「おいおい……マジかよ」
カーナビのテレビから流れるニュースに、菊は血の気が引いていった。
同時に、我ながら無責任と思える期待が湧いてくる。
(公子さん、あなたが来たこと、そしてまだ留まっているということは……“これ”を解決するためなのでしょうか……?)
けたたましいサイレンの中、逃げ惑う人々を見ながら、菊はそう思わずにはいられなかった。