第43章 In the Ghost town
「えっ、ちょ――!」
恥ずかしさに顔を覆いたくなるが、そうすると振りきられてエドの腕の外に飛び出してしまうので、おとなしくエドの首に手を回す。シュバッと、それはもう早い動作で。
不思議なことに、足元や手に絡まっていた靄が、ゆっくりと薄れていった。
走ってる内に風とかで振りきれたのだろうか?
というか、エド、めちゃくちゃ足が速い。
そもそもなぜ彼がここに!?
そんな私の疑問に気づいたのか、物凄いスピードで走りながら、エドがにっこり微笑した。
「ご存じでしょう? 僕は頭脳派なんです」
……さっき思いっきり殴り倒してましたよね?
私がかろうじて1つのツッコミをすると(表情で)、エドの眼鏡のレンズに、ネオンブルーの色で数式が流れ始めた。
まるで、パソコンの画面を反射してそうなっているように。
「公子さん、この仮想空間で筋力がモノを言うと思いますか?」
ピピーッ、とアラームが鳴る。
目の前の地図では、私を示す青丸と星印がほぼ重なっていた。
「だから、“彼”にもきっと理由があるはずです」
「……彼って?」
エドは私の質問に答えず、走る足を止めた。
辿り着いたのは、なんの変哲もない家だった。
エドは当然のように扉を開けると、土足で玄関に入っていく。
日本によくある内装だった。
家具や電化製品の配置、壁、床、天井。
どれをとっても、奇妙なほどの既視感ある。
いや、見たことがあるとか、懐かしいとか、そんなレベルじゃない。
「なんで……」
――ここは、私がうまれた家だ。