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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第41章 暗鬼による確信による、


その声は、この場にいる誰よりも冷静で、誰よりも優しい声は。

「落ち着いてください。らしくないですよ」

紛れもなく、菊だった。

耳に入ってきただけで泣きそうになる声が、私を庇うように前に立った。

その目は真っ直ぐアルフレッドを見つめていて、銃を向けられていることなど、気にも留めていないようで。

背筋を伸ばして立っていた。

「き、菊……!」

「大丈夫ですアーサーさん」

「あんなあいつ久しぶりに見た……マジで撃ちかねねぇぞ!」

アルフレッドに歩み寄ろうとする菊を、アーサーが引き留める。

アーサーの言う通り、アルフレッドの瞳は濁りきっていた。

錯乱している、とはっきりわかるほどに。

銃口も、見開いた瞳も、赤いマシューを必死に抱える腕も、全てが一触即発だ。

匂い立つような殺気を立ち上らせ、純度の高い憎悪で、アルフレッドはその水色の瞳を汚していた。

明瞭な殺意に、私は怖くて一歩も動けない。

風が髪一本を揺らすのさえ、恐ろしく感じるほどに。

「菊、さん……」

懇願する。

けれど菊は、全てを理解した上で私に微笑みかけ、アルフレッドに歩み寄ろうとする。

そのとき、確信めいた予感が脳裏を駆けた。

予感というより、それは既視感であり、焦燥感であり――

なにか取り返しのつかないことが起きようとしているのに、それをただ見ているだけしかできないような――

次の瞬間、

「……っ!」

銃声と、誰かの噛み殺した呻き声が上がった。
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