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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第40章 疑心または月夜にて


会議場を飛び出して間もなく、キキーッと真横に車が急停止した。

全速力で走っていたため飛び上がるほど驚いたが、そんな暇もなくドアが開け放たれる。

「乗れ!」

鋭い声の主はアーサーだ。

助手席にはフランシスもいる。

「マシューは!?」

乗り込みながらアルが尋ねると、アーサーがアルに携帯を投げた。

「見失った、だが行き先はわかってる!」

アルがキャッチした画面。

そこには、ある建物の画像が表示されていた。

それは、私がさっきトリップしてきた、施設の画像だった。

マシューから先ほど送られてきた画像のようだ。

メッセージは空白になっている。

「ねぇアル、なにが起きているのかお兄さんに話すべきじゃない?」

「ハッ、そいつが話さなくたってもうじきわかるさ」

アーサーが鼻で笑う。

アルはなにも返さない。

フランシスと菊は、やれやれとため息をついた。

そうこうしていると、研究所に到着する。

一目散にドアから飛び出したアルを追い、研究所の敷地に踏みいる。





――そこに、彼はいた。





爆破されたかのように荒れ果てた玄関に、マシューは立っていた。

「マシュー!」

呼ばれた彼が、振り返る。

――あ、この感覚は……

唐突に、マシューを取りまく景色がぐにゃりと歪む。

きらきらした細かい粒子が立ち上ぼり、遊ぶように彼のまわりに溢れていく。

マシューが優しく微笑んだ。

同時に、彼の姿が、風に吹き消されたかのように消える。

「マシュー!!」

ほとんど悲鳴のような声を上げて、アルはためらいなく光の中に飛び込んだ。

無意識に伸ばした自分の手と、アルの姿がかき消えるのが見えた。
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