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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第39章 錯綜と進む針と


上司の言葉は、暗にアルフレッドを非難しているようだった。

彼女に手を出すな、というアルフレッドの指示は、上司たちにとってそれほどまでに望ましくなかったらしい。

「いいかい? 彼女は名誉や報酬目当てじゃない、ただの善意で協力してくれているんだ! それなのに、俺たちのわがままに付き合わせるわけにはいかないだろ!?」

「善意、ですか。それはなんとも心許ありませんね」

「――っ!」

上司の揶揄にカッと怒りが沸き上がる。

けれど、確かにそうかもしれないとアルフレッドは思った。

彼女自身の命がかかっているわけでもなければ、見返りを求めているわけでもない。

むしろ、こちらの世界にやって来ることの方が、彼女には危険なことだろう。

今でこそロヴィーノの件があるが、彼女が再び現れるという保証はどこにもないのだ。

そこで、無意識にも自分が、どれほど公子をあてにしていたかに気づいた。

「……言っただろ、彼女はどこにも属さないからこそ、皆を結びつけられるんだ」

「そうでしょうか? 本当にそう言い切れますか?」

「それは……全部が全部把握できてるわけじゃないけど」

「そうです。いいですか、アジアをはじめ、枢軸国――特に彼女が初めて会った日本は、彼女の出自も考え、我々より親密な関係を築いている――我々より情報を持っている可能性は十分にあります」

「菊が? そんな――……」

「それを否定し切れない以上、あなたのその甘いスタンスは危険です。あなたは、この国の人民の命を背負っているのですよ。それを重々御承知下さい」

「…………」

まるで子どもに言い聞かせる口調だった。

言い返すこともできず、その気力もなく、アルフレッドは唇を噛んだ。
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