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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第38章 ゼロ地点の結界より


たしかに、彼の言うとおりだ。

『知り過ぎだよ』――声はそう言っていた。

ならなぜ、“これ一台でスパコン性能”なんていう“知る手段”がここにある?

「しかもこんな街で、衣食住完璧に用意しておくなんて、俺たち二人だけにそんな手間かけてる余裕……イヴァンにあるのか疑問なんだぜ」

エアコンも風呂も、快適な生活が送れるよう完備されている。

とくに拘束されてもいなかった。

そういえば、他の家はどうなっているのだろうか?

自分たちの家だけ環境が整っているとしたら、気味が悪いどころの話ではない。

何者かの意図が、確実に存在していることになる。

「なんか……『ここでなら好き放題調べていい』って言われてる系?」

「むしろ、『これだけ準備したんだから、さっさとここで調べ終えろ!』って言われてる系なんだぜ!」

ヨンスが謎の笑顔を満面に浮かべ、元気にこたえる。

……なんだ、それは。


“これ一台でスパコンPC”に、この街。

なにを意図してなされたものなのか、全然検討がつかない。

しかし少なくともイヴァンだとか、そんな一国のものではなくて、

「じゃあ俺たちをここに連れてきたのって」

「異変の黒幕……いや、異変そのものとか?」

「マジ余計にタチ悪い!」

あっはっは、とヨンスの笑い声が返ってきた。

大丈夫かこいつ、と思っていると、ヨンスの瞳に煌々たる確信が宿っていることに気づいた。

「どんな黒幕だろうが、感謝してるんだぜ」

「?」

ヨンスが、ゆっくりとPCのディスプレイに手を添える。

「こいつなら、絶対に解析できる」

唇の端が、挑戦的に吊りあがった。

確固とした自信を秘めた、力強い笑みだった。

そんな彼に、いい意味で香は脱力する。

「OK OK、俺もできること頑張る的な」

しばらく香は、本を読むことに集中することにした。
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