第26章 電波塔クラスレート
調査記録、といえば聞こえはいい。
しかしその実、ただの日記である。
その時々の騒動の記録を見返して、思い出し笑いしたり、穴に入りたくなったり、ひとりで楽しんでいる。
――だからこそ、見られて恥ずかしいというレベルではない。
だが、これ以上この話題を引っ張るのも、得策ではないだろう。
私はカレンダーを見た。
今日は日曜日、明日は社会生活が待ち受けている。
さて、ギルをどうすべきか……
「腹減ったな」
「……」
重々しく、ギルが言った。
いろいろ頭を悩ませることがあるのに、またひとつ面倒事が増えた気がする。
ひょっとしたら、『今すぐ行く』という選択肢も考えるべきなのかもしれない――
「携帯、使えてたのか?」
ふと、思い出したように尋ねられた。
使えてた、という言い方が、妙に耳に残る。
「メールとかネットとか、通信系の機能はなぜか圏外になっていて使えませんでした。他のカメラとか録音機能は使えましたけど……」
「そうか……通信系か……」
考えこむギル。
ことによると、イヴァン様がお付けになられた発信器について思考しているのかもしれない。
さらに私の“戻るタイミング”などの悩みを察し、いい案でも出してくれるのではないか――!?
「公子」
「なんでしょう!」
「俺にホットケーキを作れ!」
ひどい勘違いだった。