第26章 電波塔クラスレート
西の空が一瞬光った。
数秒して落雷音が轟く。
どうにも足が気持ち悪い。
早歩きだったせいか、靴下に滲んでしまったようだ。
ギルは大丈夫なのだろうか。
というか着替えなんてないし――
「……そうだな」
ギルが、私に顔を向ける。
彼は穏やかに微笑んでいた。
瞳には優しく、あたたかな明かりを灯している。
けれど少しだけ、ほんの少しだけ――なんだか泣きそうだった。
「公子が頑張ってるんだもんな」
「?」
ギルがニカッと笑う。
いつものような、底知れぬ自信に満ちた笑顔。
それは鈍色の雨空に似合っていなくて、なんとなくどんよりしていた気分がパッと晴れていった。
「行くぞ」
「もういいんですか?」
「あぁ、用は済んだ」
「眺めてただけじゃないですか」
「ケセセセ! 凡人にはそう見えるんだよ!」
ギルの中二病節が炸裂する前に、私はここへ来たギルのようにさっさと歩き出した。