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【ヘタリア】周波数0325【APH】

第20章 追跡先へ


「してやられてもうたなー」

困ったように頭に手を当てて、アントーニョは苦笑いした。

焦りの全くないその声が、無人の廊下に響く。

隣を歩くフランシスは思案顔で、顎に手を添えてつられたように笑んだ。

「そうだねえ。まあ菊が一緒だろうからそこまで心配じゃないけど」

「あんのクソ眉毛、停電に乗じるなんて相変わらず汚いマネやなぁ。腹立つわぁ」

朗らかな笑顔に恐ろしい影を感じて、フランシスはなだめながら目的の部屋をノックする。

すぐに扉が開き、ギルが顔を出した。

「おせぇよ」

不満そうな声と表情が出迎える。

「ごめんごめん。でも抜け出してくるの大変だったのよ~!」

言いつつ二人が部屋に入ると、窓もなく狭い小部屋が待ちうけていた。

以前は書庫だったのか、壊れそうな骨組みの空っぽな本棚が天井近くまで伸びている。

他にあるものといえば机、折りたたみ式のいす、一台のパソコンくらいだ。

ギルが「この部屋もうすぐ取り壊されんだよ」と言っていたが、なるほどとフランシスは納得する。

と、アントーニョの目がパソコンに釘付けになった。

記号的な青色の背景に白文字、そんなウィンドウが壊れたように現れては消えていっている。

「ギルちゃんこれなにしてんの?」

「うわっ、さわんじゃねぇぞ!」

慌ててパソコンに駆け寄るギル。

少し残念そうに口をとがらせながら、アントーニョは腰掛けたギルの背後から画面を覗きこんだ。

タイピングをしていてもしていなくても、ウィンドウは途絶えることなく出現と消失をくりかえしている。

さっぱりわからず、アントーニョは首をひねった。

そんな面持ちの彼を見てギルはニヨニヨ笑いながら、さも得意げに口をひらいた。
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