第15章 廃マンションにて
「起きたのか」
「「!」」
びくっと顔を上げると、部屋の入り口にルートが立っていた。
私もアーサーも、その気配に気づかないほど自分の世界に入っていたらしい。
「具合はどうだ」
「二度も本当にすみません、少し頭が重いくらいなので、もう大丈夫だと思います」
私がそう申し訳なさそうに言うと、ルートは一瞬安堵を浮かべるも、すぐさまその口元をひきしめた。
そりゃ二度も同じことを繰り返してるものね。
肩身狭い心地だが、三度目がないとも限らないと考えると、ため息をつきたくなった。
自分の体はどうなってしまったのやら。
「フェリシアーノの話だと、パソコンに触れたら様子がおかしくなったようだが」
「はい。ファイルを見ようと操作し始めたら、急に鼓動がおかしくなって……」
ふむ、とルートは頷いた。
瞳がいろいろと考えにふけっていた。
病院で精密検査を受けよう、なんてことを言い出しかねない様子だ。
「とにかく、早くこんなところから出るぞ」
「出て、それからどうすんだ?」
間髪入れずにアーサーが言った。
ルートは厳しい顔だ。
「……それを今考えている。公子を連れ回すことなどしたくないしな」
言いにくそうな声色のルートに、アーサーは「しゃーねぇな」とため息をついた。
わざとらしく大仰に首をふり、やれやれと立ち上がる。
なにをするつもりなのか、私とルートが顔を見合わせると、
「隠しておきたかったが……仕方ないな」
と、思わせぶりに口をひらいた。
ついてこいと背中で示し、部屋を出ていく。
わけもわからないまま、私とルートはそれに続いた。