第3章 【今日も日陰で花は咲く】
数千歩譲って、客として
来店したなら理解しよう。
しかし、鬼灯は明らかに
店の制服と分かるそれを
その身にまとっている。
「(しかもやたら似合う)」
「奇遇ですね」ではなく
「計算通りだ」の方が、
しっくり来ると思う薺であった。
彼女のジトッとした目玉が
鬼灯の背中を見つめている。
ピポーン
「いらっしゃいませ」
ピポーン
「ありがとうございました」
入店音が鳴る店内に、
鬼灯の声が響いた。
卒なくレジ作業をこなし、
接客態度も申し分ない。
お辞儀の角度なんて
美しすぎるくらいだ。
無愛想なのが玉に瑕の
コンビニ店員鬼灯は、
入社一日目にして
“店長お気に入り” の
称号を得たようだった。