第18章 病
「なっ、なんだ貴様!!」
「……これ以上はやめておけ」
「ちっ、覚えてやがれ!!」
男達はぞろぞろと逃げ去っていく。志摩子はほっと胸を撫で下ろすと、急いで斎藤の元へと駆け寄った。
「一様、急に行かれては困りますっ」
「ああ……すまなかった。ところで雪村、お前一人なのか? 他の者達は」
「あっと……はぐれてしまった、みたいです」
「……なにゆえ」
「沖田さんの部隊とご一緒だったんですけど、おかしいですね……見当たりません。斎藤さんは志摩子さんと一緒なんですね」
志摩子がにっこりと千鶴に微笑みかけると、志摩子の隣にいた斎藤が少しだけ照れているように思えた。千鶴は一瞬首を傾げるが、はっと何かに気付いたように二人へと尋ねる。
「もしかして、逢引ですか!?」
「……ぶっ」
「……逢引、とはなんですか?」
「え、志摩子さん……逢引を知らないんですか?」
「?」
くいくいっと志摩子が斎藤の着物の裾を引っ張る。
「どうした? 志摩子」
「一様、逢引とは何なのですか?」
「うっ……そ、それを俺に聞くのか?」
「いけませんか……?」
「い、いや。構わない。逢引というのはだな……男女が人目を忍んで会うことを……言うのだ」
「なる……ほど? では私達は、人目を忍んでいるのですか?」
その志摩子の問いかけには、場にいた誰もが何とも言えない顔になり、話題は急遽打ち切られることとなった。