第1章 はじまりの春
次の日、朝ドアからはいって
いつもはじっくりと見ない
窓際の一番うしろの席を見た。
そこにはいつものように
ひとりの男の子が
窓の外を眺めていた。
窓からはいる
春のやわらかい風に
二宮くんの髪がふわりとゆれる。
さらさらした髪の毛が
風でなびいて。
少し長めの髪の毛から
白い首筋がのぞいている。
少しだけ。少しだけ、
トクンと胸が音をたてた。
窓際で外を眺めるなんて
高校生なのに
変だよってそうおもうのに
なぜか、それが似合ってしまう。
すごくキレイに見えてしまう。
不思議な空気感を
身にまとっていた。
なかなか動けないでいると
二宮くんが
急にこっちを向いた。
心臓がぎゅって掴まれた
ような気がした。
うるうるでかわいいのに
色気を感じてしまう目。
きれいに描かれた二重。
瞬きをするたびに
ふぁさふぁさと
揺れるまつげ。
すっときれいに通った鼻筋。
全部キレイなパーツ
ばかりなのに
唇だけは
かわいいあひるぐち。
まゆげも自然でかわいくて
犬みたい。
かっこいい
そうおもう余裕がないほどに
私は彼に心臓をぎゅって
掴まれていた。