第1章 俺だけのモノ
そもそも人見知りの俺が
『今日も可愛いな。』
なんてセリフを好きでもないやつに
言えるわけがない。
もう2年近くも一緒に仕事してるのに
なんでわかってくんないんだよ。
俺は保菜美がこんなに好きなのに!
撮影が終わるとまた保菜美が
マイクを外しに来る。
「お疲れ様でした!
今日の玉森さんも素敵でしたよ!」
『ありがとう。』
「ん?どうしたんですか?
なんか元気ないですね?」
『ね、あとでちょっと話あるんだけど。』
「話、ですか?」
『うん。ロビーで待ってるから
終わったら来て。』
「わかりました。」
俺はさっさと着替え
「玉~、飯行こ~!」とくっついて来る
宮田を押しのけロビーに向かった。
廊下でガヤさんとすれ違う。
「玉、保菜美に告んの?」
『うん、
ガヤさん俺の気持ち気づいてたんだ。』
「まあ玉と付きあったとしても
俺は諦めないけどね。」
『そんなこと言ってられるの
今のうちだけだから。おつかれ。』
「おう。」
絶対に保菜美は俺のモノにする。
ガヤさんのが女心わかるかもしれない。
喜ばせ方知ってるかもしれない。
でも保菜美は譲れない。