第2章 イベント当日
「嵐がさっていった」
私が呆然としていると、美優がぽつりと呟いて此方を見上げてきた。
「私も今同じ事思ってたよ…」
そう言うと、お互いどちらとも無くプッと吹き出し笑ってしまった。
はたから見たら奇妙なカップルだろう。
「うわーーー、まだ私震えてるよ」
自分の指を美優に見せる。まだ本当に震えてるし、下手をすると腰が抜けそうだ。
「いやぁ、由香本当に緊張してたしね。人が変わったかの様に無口になっちゃって驚いたよ。最後とかなにあれ!!馬鹿じゃないのって思ったし!」
そう言いながらも、私の指を握ってマッサージしてくれる美優様優しいです。
「ほんと…って、あーーー!」
自分の不甲斐なさに相槌をうっていたが、自分の最大の落ち度に後になって気付いた。
「私が女だって事伝えてない!」
普通なら伝えなくても伝わる事が、まさかの勘違いのまま時間が過ぎてしまい…。
「あー、あれ完全に男って思ったまま次に行ったもんね」
呆れ顔の美優が「気にしない気にしない」って肩を叩いてくれたけど…好きな実況者さんにせめて性別だけでも伝えたかった私の無念ははれなかった。