第9章 逢瀬のカタチ
櫻井くんがどんな相手を、恋愛ひいては結婚相手に選ぼうとしてるのか。
多分、私は何となく分かってる。
その相手に、あんな風に振る舞うのか。
恋人にもあんな感じでいるんだろうか。
そんなワケないよね。
知ってる。
それは、私には関係のない話で。
最初から分かっていた話で。
それなら、せめて抱かれるだけでも、って思った自分がいた。
どうやっても櫻井くんは私のモノにはならない。
私も櫻井くんのモノになれない。
こんな歪んだカタチじゃないと、触れることすら出来ない。
『空いてます。19時までなら。』
送信する。
体の奥と心の奥が疼いた気がした。
クッションを抱え込んで、その感覚を抑え込む。
櫻井くん、と呼ぶようにしたのは、私の小さな抵抗。
もう、翔くん、とは呼べない。呼ばない。