第9章 混乱
「そんなはずは……これは、そう、これは失敗作なんだ……」
彼を逃がすまいとアリスは一歩踏み出そうとするが、セバスチャンがそれを阻止する。
「何の真似かしら?」
「坊ちゃんの行方もそうですが、アリス様をこれ以上危険な目に遭わせるわけにはいきません」
「そんなこと言っている場合!? あいつを捕まえてこの気持ち悪い実験の真相を聞き出さないと!」
「それはこちらの台詞です! 貴方には、あれが一体何なのかお分かりなのですか!?」
「あれは……」
まるで、ゾンビ。
その言葉が相応しいと言わんばかりに、死体は生きた人々を食い散らかし暴れる。
「ここは僕らに任せてもらおうかな?」
「アロイス?」
「アリスは早く逃げて! 僕とクロードが、この化け物を始末しておくから。リアンっておっさんを追うならそれでもいい。早く!」
「アリス様、ここは私と旦那様にお任せを」
アロイスとクロードのその言葉と共に、クライヴはアリスを抱き上げすぐにリアンの後を追うように会場を出る。
「アロイス――っ!!!」
遠ざかる彼らの姿を最後に目に焼き付け、アリスとクライブ、そしてセバスチャンの三人はリアンの後を追う。彼の後を追い、紛れ込んだ薄暗い埃っぽい場所。どうやら、船の動力室のようだ。迷うことなく、その動力室へと入るべく階段を駆け下りた。
しかし、ぴくりとクライヴは辺りを見回し動きを止めた。