第5章 予感
「ほんと、悪魔ってどいつもこいつも鬱陶しい。使い勝手が悪い」
「ありがとうございます」
「褒めてない」
眼帯をセバスチャンに渡すと、何も言わず彼は受け取った。アリスは少し考え、そして息を吸い込んだ。
「クライヴ、命令だ。私の元へ来い」
重く冷たい声が、部屋に響く。すると、足音もなく一つの影がアリスの目の前に落ちる。
「姫様、こちらにおられましたか」
騎士のように、片膝をつき彼女の前へひれ伏すクライヴの姿がそこにあった。アリスはゆっくりと、セバスチャンへと視線を向けた。
「私はこの通り安全だ。早く主人のところに行け、セバスチャン」
「私が護衛では不満でしたか?」
「わかってるなら早く行ってくれないかしら?」
「はぁ……わかりましたよ」
セバスチャンが部屋を出たところで、クライヴは重く溜息を吐いた。
「姫様、お怪我は?」
「ないわ……ただ」
「ただ?」
アリスはぎゅっと、クライヴへと抱き着いた。この状況で何を? と一瞬思うクライヴだったが、ただ甘んじてそれを受け入れる。