第23章 桜人
『…っ』
驚いて桜の木を見上げると、桜は変わらず風に揺れていた。
「そっちじゃねぇよ」
空耳なんかじゃない。
声がした方を振り返るとーーー
『な…』
銀時「よぉ、じゃじゃ馬娘」
十六夜の月に照らされ、銀色の髪を揺らしながら立つ影があった。
銀時「随分と立派な木じゃねェか」
影は、桜の木に触れ枝の先を見つめた。
銀時「今は葉だけだが、こんだけ茂らせてんだ、春には是非花見にお付き合い頂きたいもんだ」
『なんで…』
桜を眺め、銀さんは眩しいものを見るように目を細めた。
銀時「この木になろうたァ、随分とデカく出たもんだな」
『な…!いいでしょ、別に…』
き、聞かれてた…
銀時「だが」
ため息をついた銀さんが桜を仰ぐ。
銀時「なれるさ、きっと」
『…っ』
目が合い、その瞳の揺らめきに捕われる。
銀時「なんつっても、1ヶ月そこらの付き合いだってのに勝手に入り込んで勝手に育ってやがったんだ」
銀さんは桜に背中を預けて腕を組んだ。
銀時「雨が降ろうが風が吹こうがびくともしねェ木が…俺たちの中にどっしり根付いてやがるんだからな」
顔を上げた銀さんの視線の先には、見慣れた2つの影が並んでいた。
『だから、なんで…』
神楽「さくら…」
新八「さくらさん」
神楽ちゃんと新八くんは安堵した様な顔で私を見ていた。
神楽「やっと見つけたヨ」