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戦国四重奏 (戦国無双3)

第20章 story19“決意の先に待っているもの”


「私は…幸村が好きです」

「………お前は強いな」

自分と向き合わず、うやむやにする事も出来た筈なのに。
逃げずに此処に来てくれた。
涙を流す彩芽を抱き締めたい、だがそれはもう叶わない事なのだ。

「その涙で…十分だ」

抱き締められなくても、想いが叶わなくても、今真っ直ぐに自分を見つめ彩芽は泣いている。
自分の事を思い、悩み、考えて自分の為に泣いてくれている事実がある。

清正はそれで十分だと感じていた。


「好きになってくれて…ありがとう清正」


泣きながら笑う彩芽の顔はとても綺麗だった。
彩芽が立ち去った後の鍛練場で一人柱にもたれて清正は座り込む。

「………」

本当はこの手で幸せにしてやりたかった。
本当は隣でずっと笑っていて欲しかった。
十分だと彩芽に告げた筈なのに。

胸がチクりと痛む。
こんな痛みは今まで味わった事がない。



「……俺は器が小せぇな」



ポツリと呟いた清正の言葉は鍛練場に静かに響いて消えていった。

大きく息をついた後、清正は立ち上がりまた槍を構える。

「…これからアイツの為に出来ることはこの家を守る事だ」

彩芽が好きだと言ったこの地を、この家を死ぬ気で守る。
迷いのない太刀筋は大きく風を切り、ピタリと止まったのだった。









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