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Do not look back behind【進撃の巨人】

第1章 強く握られた拳




走り続けていた足を止めると、右腕で額の汗をぬぐう。

その建物を見上げる。何かが擦れる音と声が耳を通りぬけると、不思議な緊張感に身がすくむ。
ここは何度来ても慣れないな…。

いつもの裏口に周り、敷地内に足を踏み入れる。

兵団関係者への手紙は機密事項の漏れを防ぐために、班長以上の上官に手渡しする約束になっている。

古びた机に置かれた小さなベル。
これが配達の合図になるのだが、大抵ベルを鳴らす前に誰かしらと遭遇するため、鳴らしたのは数える程だ。


壁に持たれかかり俯く黒髪の男性兵。肩のマークからして調査兵に間違いないだろう。

今日もベルを鳴らさないで済みそうだな…。
ハンナは男性兵の前に立つと、再び業務用の笑顔を貼り付け声をかけた。

「あの、手紙です。班長以上の方を呼んでいただけますか?」

「……あ?」


……こんな言葉を返されたのは初めてだった。…私がおかしいのか?
しかも顔を上げて髪の間から見えた目が、尋常でない程こちらを睨んでいる。
たかが一般兵に私はそこまでニコニコしてゴマをするべきなのか?

ブツブツと文句を頭に並べると、ハンナはもう一度笑顔を作り直しやり直してみる。

……落ちつけ、私。
相手は腐っても兵士だ。私がここで諦めると次に来た弟達がどんな目に遭わされるかわからない。落ちつくんだ…早く帰ろう。

「手紙をお届けに来ました。班長以上の方を呼んでいただけますか?」

「あぁ……よこせ。」


いや、だから!!!
上官呼べよ、クソ兵士!!!


作っていた表情が剥がれ、口が引きつっていく。

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