Do not look back behind【進撃の巨人】
第2章 自分の足で
崩れた瓦礫の山から小さな音が耳をぬけた。
足を止め自然と顔をそちらに向けると、見覚えのある痩せた顔、細くなびく髪。
毎日背中を押してくれる優しい手が、力なく垂れている。
「カ、カイ…?」
近寄り両手で包み込む。
………冷たい。
走馬灯のように次々にカイとの思い出が巡る。
カイはハンナが4歳の時に出会った。高貴な家に生まれたが、優秀過ぎる兄の存在と他人を優先してしまう優しい性格が、カイを生き苦しくしていたらしい。
使用人らしき女性に手を引かれて現れたカイの瞳に光は無かった。
その日から、カイが隣りに居ることが当たり前になった。
しかし今、彼は隣りから消えようとしている。