過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第77章 それぞれの想い
エルヴィンを一方的に拒絶して一週間・・・・
ナナシは尾行を撒き、またシーナに来ていた。
今度はコンラッドに会うためではなく、
エルヴィンがソロモンの孫だという裏付けを取るためだった。
適当な宿に入り女装して憲兵団本部へ行くと、
ナナシは受付の兵士にニッコリと笑顔を向けた。
「申し訳ありません。アポイントメントは取っていないのですが、
ナイル・ドーク師団長様にお会い出来ますでしょうか?」
兵士はナナシを見て頬を赤く染めながら帳面のような物を捲って
予定を確認している。
「師団長にどのようなご用件でしょうか?」
「ご相談したい事がありまして・・・・。師団長に
『ナナリーが来た』とお伝え頂ければ察して頂けるかと思います」
「わかりました、少々お待ちください」
ナナシは待っている間、憲兵団の兵舎の作りに眉を寄せた。
内地で安穏と暮らしている癖に、調査兵団よりも良い給金と
商人からの裏金で私腹を肥やす輩が多いのが不愉快で、
少しは調査兵団にも回せと思ってしまう。
そうすれば、エルヴィンの苦労が少し減るのに・・・。
そこまで考えて、いかんいかんと首を横に振った。
自分から離れなければならないというのに、
ふとした瞬間、ナナシはエルヴィンの事を思い浮かべてしまっていた。
酷い言葉を浴びせた上、殴ってしまった自分に
彼を想う資格は無いのに・・・と自嘲する。