過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第69章 デートしよう!
「先日『心臓』についての情報が入ったと教えたね?
それには夜会に出る必要があるんだ。
残念な事に君のあの素晴らしいドレスは
ボロボロになってしまったから新調すべきだと考えた。
故に、今ここにいる」
やっと告げられた理由にナナシは目を丸くして、
エルヴィンを見た。
つまり彼はナナシの為に、ドレスを新調しようとしてくれているのだ。
「そうだったのか・・・・すまない、お主の事を誤解していたようだ。
だが、夜会に出るのなら女として出る必要は無いのではないか?」
「いや、君はまた『ナナリー』として出て欲しい。
その方が自然で、夜会に溶け込みやすいだろう」
エルヴィンはきっと多くのことを考えてそう判断したのだろうが、
だからといってドレスを新調する必要はあるのだろうか?
オーダーするとなると、とても高くつくはずである。
「事情は理解した。だが、ドレスを新調する必要は・・・・・」
「ナナシ、お願いだからドレスを作らせてくれないか?
普段、君に苦労ばかりさせているから、その謝罪の証として
プレゼントさせてほしい」
思いっきり下手に出られて、ナナシは言葉に詰まる。
これで断ったら自分が悪者になるようで居心地が悪い。
だが、だからといって男性体である今の身体で採寸しても、
女性体とはサイズが違うので意味が無くなってしまうだろう。
それに露出の多いドレスを作られても、ナナシは着れないのだ。
ここは自分のデザインで作って貰うしか無い。
「エルヴィン・・・ドレスのデザインは私が決めても構わないだろうか?」
恐る恐る尋ねると、エルヴィンは満面の笑顔で
「勿論だとも」と了承してくれた。
「君が欲しいと思うドレスを仕立てよう。
君が喜んで着てくれるなら私も嬉しいからね」
「我儘を言ってすまぬな、エルヴィン」
「君が謝る事は無い。さぁ、どんなドレスが良いか話し合おう」
自然な動作で肩を抱かれ、店の奥へと連れて行かれたナナシは、
エルヴィンに上手く乗せられたことに気づかないまま、
ドレスを作ることになった。