過去と、今と、未来の狭間で【進撃の巨人 エルヴィン 前編】
第2章 金髪碧眼の少年
息を吸い、周囲の空気を圧縮するように集中させ憲兵達の周囲に張り巡らせる。
ナナシには自然界の精霊と呼べるものを操る力があり、
特に闇と風との相性が良い。
だから今回は風の力を使って、
憲兵達の体内の気圧を徐々に調整してやった。
吹かすだけが風では無い。
子供を追い掛けていた憲兵達の息が次第に上がる。
人間は息が出来なければ走る事も、歩く事も、生きていく事さえ出来ない。
意識を保てないレベルまで追い込んでやると、
ナナシは逃げている子供を捕まえ強引にその場から離脱した。
表通りに程近い場所まで来ると、
ナナシは肩に担ぎ上げていた子供を下ろして
周囲の気配を探る。
どうやら撒けたようだ。
子供に目をやれば、彼はキョトンとした表情で自分の顔を見ていて、その姿がやはりあの人に似ているな…とつい感傷的になってしまった。
金狼と同じ金髪碧眼のせいかはわからないが、
端正な顔立ちが彼と少し似ている気がする。
だが、この子供にいつまでも構っていられる訳でもないので、少しだけ自分より低い位置にある頭を一撫ですると
「ではな…」と声を掛け、ナナシは歩き出した。